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2011年10月13日木曜日

伝統のたすき

4,5年前にこんなことがあった。

公式戦ではないが大事な交流戦を休むという選手がいたので、苛立ちを覚えた私はこんな配信をした。

「...とくに、レギュラークラスの欠席は厳禁。クラブの試合を最優先させてください...」

準レギュラークラスからいっせいに反発があり、大バッシングを受けた。
「レギュラーでないうちの子は休んでいいわけですね」
「コーチの主力選手中心のお考えがよくわかりました」etc...

なるほど、たしかにそう受け取れる。これを 失言 といい、私が大臣なら辞任するところだ(笑)言葉が足りないとこうなる、ということを学んだが、真意はまったく違う。たしか関西圏への遠征で、全国出場歴もある奈良や京都の強豪とのマッチだった。そういったチームとの戦いは貴重である。富浜交流戦が「ぬきうち漢字テスト」なら、全国区との対戦は「センター試験」のようなもので、たくさんの赤点をもらい強化ポイントがよりハッキリするからだ。しかし県外強豪とのマッチは簡単に実現するものではない。まず、ほとんどのチームはパイプがない。そして、運良く一度対戦できても、相手に(メリットなし)と思われたら、次 はない。県外へ行ったり呼んだりしても、10−0 のゲームなら価値を見出せないからだ。だから、このパイプを切らせないために、こちらはベストの布陣で臨む義務がある、ということだ。

一方、現在のイーグルスはまだ、新興の弱小チーム の枠を抜け出せない。が、そのわりに県内外の有力クラブとの対戦はある。自慢ではないが...いや自慢だが、これは創始者のGMや私の顔利きによるところが大きい。けど、すごいのは実はわれわれではなく、当時の選手たちだったのだ。10年前も、5年前も、彼らが優秀でがんばったから、今も私に声をかけてくれるのだ。彼らはイーグルスの先輩ではないが、彼らの伝統を受け継いでいるのはイーグルスだ。そしてその伝統のたすきは、今後も未来の後輩たちへ受け継がねばならない大切なものだ。けっしてもう捨てていい、というものではない。組織の一員になるとはそういうことで、「学校の紅白戦で休みます」という価値観は受け入れられない。緑のユニに袖を通した瞬間、過去から未来へ伝統というたすきをつなぐ、リレーのメンバーのひとりになる。君に、その覚悟はあるか?

2011年10月12日水曜日

愛するもののためにたたかう

ずいぶん昔の話だが、今日ひょんなことから思い出した。
前クラブで5年生チームの指揮をとっていたある年、総合力はそこそこなんだが、攻撃の迫力・ゴールを奪う決定力 にやや欠けると思っていた。そんなある日、ちょうど秋の気持ちのいい今ごろだったかな、尾張地方の優秀な選手が『体験』にやってきてくれた。県トレ関係者の推薦(勧誘?)だから、いい選手だろうとは思っていたが、桁違いの能力だった。スピード、スキル、判断にメンタリティ...どれをとってもウチの中でもトップクラスだった。地元のクラブがしょぼいので、もっと高いレベルでやりたい とのことで来てくれたが、彼こそが最高の、S級の選手だった。ウチのA級の選手たちともすぐにうちとけあい仲良くなって、内心(もらった!)と小躍りしそうだった。(向こうのちっぽけなクラブじゃ彼も満足できないだろう)なんて高をくくっていた。コイツがいれば弱点はなくなる。グランにも勝てる!全国も見えてきた!

地元の所属クラブが月末に控えていた『ミニ大会』を終えたら、こちらにお世話になります。ってことで、楽しみに待っていた。おそらくはBC級であろう彼のチームメイトは、驚き、落ち込んだに違いない。ここからは私の想像だが、こんなストーリーだったんじゃないかな。

いままでTにおんぶにだっこだった弱小クラブは、最後のお別れ大会に奮起した。
「最後くらい勝って送り出してやろう」
近所の仲間たちは走り、身体をはり、戦った。大差の負けが当たり前だったチームが、ミラクルの連続で優勝した!そんな、まるでドラマのような結末。そして、その歓喜と感激を知ってしまった彼は悩んだ。
「レベルの高いところでやるほうが成長できるぞ」
家族や指導者までもが移籍を促す。

「すみません。中学になったらお世話になります。あと一年はこっちのみんなとサッカーしたいです」

11歳の決断に37歳の落胆。(少し遠まわりするかもしれんけど、仲間やクラブを愛せることはいいことだ)そう納得せざるをえなかった。

小学校卒業のころには地元のプロ球団がほうっておかず、中学からはJ予備軍として奮闘し、そちらでの活躍はサッカー誌などで目にした。今日、晴れて『トップ昇格』の報に接し思う。
回り道なんかじゃなかったね。上を目指し、際限なき向上心でより高いステージを求めるのもよい。されど、近所の仲間や、地元のクラブを愛し、そのために闘う。それもまた、悪くはない。そんなハートを持った君とわずかでもすれ違えたことは光栄でした。

今後のご活躍を心よりお祈りしております。