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2011年4月19日火曜日

春の夜

「元気?」
客の来ないオンボロ店舗に、その若者は突然にやってきた。

昔々、近所の小学校で毎朝球蹴りにいってたとき、その才能に出会った。一年間かけてクラブ入りを口説いたが、遊び最優先の小僧は首をたてに振らなかった。その後、新品のボールをエサに釣り上げたが、気に入らないポジションのせいか、ジュニア時代は思ったほどの 伸び はみられなかった。Jr.ユース 〜 強豪校と進み、全国の空気も吸った。進学後はフットボールに魅入られたように「母国」を目指して海を渡り、青春をかけた。夢は果たせず、地元の大学に舞い戻ったが、土産にネイティブイングリッシュの使い手になれたのは幸運だった。フットボールへの憧憬は覚めることもなく、今は名の知れた社会人クラブでプレーしている。2時間以上も居座り続け、サッカー以外の話題はかけらも出ずに熱く議論した。通じあい、うなずくシーンもあれば、ぶつかり合い、互いを否定することもあった。

「サッカーの本当の面白さ、知らないな」

なんてぬかしやがって、生意気に(笑)

いつのまにか桜は散ったのに、まだまだ肌寒い春の宵。少し心があたたまった夜だった。

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