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2014年2月23日日曜日

ドリブルクラブ

かつて王国と呼ばれ今はずいぶんと落ちぶれてしまった某隣県には、月に一度出張している。
昼間に時間があると、サッカースクールをやっている小中学校や人工芝のグランドで、練習風景を盗み見たりしている。
コーンやマーカーを並べ、低学年とおぼしき子どもたちが巧みにボールを操っている。うちの選手たちと同レベルの子もいれば、(とうていかなわないな)というハイスキルの子もいる。
たまたま近くの掲示板に、そのスクールの 選手募集 のチラシが貼ってあった。
『小学生にパスを教えるチームから、メッシやマラドーナは生まれない!』
私のサッカー観を否定するかのような刺激的な一文が躍る(笑)
まず、おかしいと思うのは、メッシやマラドーナがドリブルばっかりしていると思わせるような書き方だ。
私の青春時代のアイドル、神童・マラドーナは、メキシコ大会(86年)イングランド戦(ちなみにBのHコーチは生観戦している数名の日本人のひとりです笑)の 5人抜き があまりに有名なのでドリブラーのイメージが強いだろうが、ドリブルもすごかった というだけで、パスセンスも抜群だった。その大会で 世界一 を決めた、ファイナル西ドイツ戦のブルチャガの決勝ゴールをアシストしたラストパスの判断は、ドリブルに負けず劣らずすごいんだ。
そして現代の神の子メッシ。バルサやアルゼンチン代表のゲームをみたらいい。彼のプレイの何%がドリブルで、何%がワンタッチのパスなのか!ゲームでなく、ハイライトシーンばかりをみていると錯覚するが、むしろパスなくしては、メッシやマラドーナは語れないんだ。
ひと昔前(ふた昔?)の日本には、ドリブル禁止 のようなチームがたしかにあった。ボールを大きくけってタテに走る。いわゆる キックアンドラッシュ という戦法だ。(この前の蒲原でウチがそう思われたんじゃないか笑)そんなクラブに ドリブルの天才の卵(日本人にメッシクラスがいるかわからんから、乾くらいにしておこう) が入ってしまったら、それは不幸だ。才能は埋没し世にでることはない。では、中澤や遠藤、岡崎らが『ドリブルクラブ』で幼少時を過ごしたら、はたして今があったろうか?
屈強な体格を生かした対人の強さと空中戦。広い視野を持ち、最適な判断のプレイを素早く行う能力。敵陣のわずかな隙を瞬間について走りこむ嗅覚。いずれも、ドリブルクラブでは育たないと思うのは私だけかな。
ドリブルを否定はしない。それどころか絶対に必要なスキルだと認めている。その上で、ショートパスやロングフィード、ヘディングやフリーランニング等の必要性にも気づいてほしい。少年はいろんな可能性を秘めている。ドリブルの得意なものはそれで生きていけばいい。けれどドリブルのセンスがなくてもゲームやチームの役に立つことはできる。そこに気づかなければ、王国にふたたび陽が昇ることはない。

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